
アーム代表の伊藤です。「選ばれる理由」が効いているかどうかは、文章の巧拙ではなく16項目の○×で判定できます。品質、実績、対応力。書いてあることが全部本当でも、競合のサイトに貼って気づかれない一文なら、必要なのは書き直しではありません。
必要なのは決め直しです。この記事では、いま書いてある一文を採点するところまでを整理します。
こんな方におすすめのコラムです
- 相見積もりになると、最後はいつも値段の話になる
- 「他社さんと何が違うんですか」に、その場で答えられなかった
- 選ばれる理由のページはあるが、作ったときから一度も直していない
- 書いてあることは全部本当なのに、伝わっている手応えがない
- 文章が下手なのか、そもそも違いが無いのか、自分では切り分けられない
先に結論。書いた「選ばれる理由」は、16項目で答え合わせができます
判定するのは4つの軸だけです。文章のうまさは見ません。見れば5秒で○×がつくことだけを数えます。
軸 | 見るもの | 項目数 |
|---|---|---|
主語|誰の話をしているか | 自社が主語の文の割合、沿革・理念・受賞歴の位置、読み手を指す名詞 | 4 |
便益|読み手が何を得るか | 見出しの目的語、「〜できます」の主語、料金と提供物の具体性 | 4 |
証拠|なぜそれが本当か | 比較できる形か、固有名詞と数字、自分で測った情報 | 4 |
体裁|読み手のための設計か | ナビの言語、表示までの秒数、料金の手がかり、二重出力 | 4 |
13点以上なら伝わっています。8〜12点は半分。7点以下なら、直すべきは文章ではありません。
ここで大事なのは点数そのものではなく、どの軸で落ちたかです。主語で落ちる会社と証拠で落ちる会社では、直す場所がまったく違います。前者は言葉を決め直す工程が要りますが、後者は事実を足すだけで済むことがあります。
検索してみると、「選ばれる理由」はほぼ同じ文が並んでいます
2026年8月30日に「選ばれる理由」の検索結果を上位29件まで実際に開いて、分類しました。
種別 | 枠数 | 書かれていた言葉 |
|---|---|---|
会社の「選ばれる理由」ページ | 8 | ワンストップ、提案力、デザインクオリティ、顧客ファースト、課題解決力 |
言語化の手順を解説した記事 | 6 | 「7つのヒント」「7つのステップ」「5つの構成要素」 |
デザイン参考のギャラリー | 4 | 1位と3位を占める |
8枠ぶんの会社が、ほぼ同じことを書いていました。業種も規模も違うのに、並べて入れ替えても分かりません。しかも全部が本当のことです。嘘は1つも書かれていません。
そして念のため書いておくと、これは他社の話ではありません。同じ検索結果に、貴社のページも並びます。
試し方は10秒で終わります。自社の「選ばれる理由」の一文をコピーして、競合のサイトに貼ってみてください。違和感がなければ、それは誰の言葉でもありません。
なぜ、書いたのに効かないのか
書いた人の力量の問題ではありません。社内で合意を取るほど、誰も反対できない言葉に寄っていくからです。
「品質」に反対する人はいません。「対応力」も、「お客様第一」も同じです。角が立たないので全員が通します。全員が少しずつ譲った結果、最後に残るのは誰も反対しない一文です。
そして反対されない言葉は、選ばれる理由にもなりません。反対する人がいないということは、競合も同じことを書けるということだからです。
だから決める人が一人の会社ほど、この採点では点が出ます。譲る相手がいないぶん、角が残るからです。逆に、部署をまたいで回覧するほど点は下がります。これは組織の欠点ではなく、合意形成という仕組みが持つ性質です。
16項目の中身
主語|誰の話をしているか
# | 1点になる条件 | 0点になる書き方 |
|---|---|---|
1 | 最初の1画面に、読み手を指す名詞がある | すべてのお客様に/幅広い業界に |
2 | 最初の1画面に、創業年・沿革・理念・受賞歴が出てこない | 創業◯◯年。技術と信頼の歩み |
3 | 業種・規模・地域のいずれかで絞った言葉がある | あらゆる業種に対応します |
4 | 向いていない人・お受けしないケースが書いてある | (そもそも書かれていない) |
便益|読み手が何を得るか
# | 1点になる条件 | 0点になる書き方 |
|---|---|---|
5 | 見出しの目的語が、買い手が買うものの名前になっている | 未来を、デザインする |
6 | 読み手を主語にした「〜できます」の文が1つ以上ある | 私たちは、実現します |
7 | サービス名が機能か成果の言葉になっている | ソリューション・パートナー |
8 | 料金・レンジ・目安のどれかが数字で載っている | まずはお気軽にご相談ください |
証拠|なぜそれが本当か
# | 1点になる条件 | 0点になる書き方 |
|---|---|---|
9 | 競合との違いが比較できる形(表・条件・数字)で書いてある | 他社にはない独自の強み |
10 | 実績が固有名詞か数字で書いてある | 豊富な実績と確かな技術力 |
11 | 自分で測った情報が1つ以上ある | 業界最高水準の品質 |
12 | 「想い」「寄り添う」「ワンストップ」「トータル」「最適な」を使わずに強みを1文で言えている | お客様の想いに寄り添い、最適なご提案を |
体裁|読み手のための設計か
# | 1点になる条件 | 0点になる作り |
|---|---|---|
13 | グローバルナビが読み手の言葉で書かれている | CONSULTING/PRACTICE/IDENTITY |
14 | 開いてから事業内容が読めるまで、3秒以上待たされない | 演出のために表示完了が5秒を超える |
15 | 料金・費用の手がかりがサイトのどこかにある | 「円」「料金」「費用」が1つも無い |
16 | PC用とSP用に同じ文字を二重に出していない | 同じ見出しが2つ、どちらも読み上げられる |
体裁も好みでは判定しません。ナビが英単語だけか、表示に何秒かかるか。すべて測れることだけです。
採点してみて手が止まったら、ポエムサイト診断で代わりに採点します。無料で、最短1営業日です。打ち合わせはありません。判定表をメールでお送りして終わります。
アームのサイトを同じ16項目で採点したら、16点中14点でした
人にだけ配る物差しは使えないので、自社にも当てました。結果は16点中14点です。落ちたのは項目1と項目5。どちらもトップページの最初の1画面でした。
- 項目1。ファーストビューは「選ばれ続けるユーザ体験をデザインする。」と「東京・世田谷区の三軒茶屋を拠点に活動している個人のデザインスタジオです」。主語が2文とも自分で、読み手を指す名詞が1つもありません
- 項目5。「ユーザ体験をデザインする」は動詞と目的語の形になっていますが、「ユーザ体験」は買い手が買うものの名前ではありません。自分で作った基準に、自分で落ちました
トップの最初の1画面だけで採点すると13点まで落ちます。14点は1クリック圏まで含めた点数です。入口ほど落ちるという構造が、そのまま自社で再現されていました。
この2つは、知っていて直していません。トップの看板は別の判断で据え置いているためです。ただ「気づいていない」と「知っていて直していない」は別物なので、点数のほうを先に出しておきます。
点数が出たあと、どこから直すか
全部は直しません。3つまでです。16項目を一度に直すと、また社内で回すことになり、角が取れて元に戻ります。
順番は主語、便益、証拠、体裁の順です。主語がずれたまま証拠を足しても、読み手の側には何も残りません。
やってはいけないこと
- 全部書き直す。落ちた項目に対応する一文だけを直します。ページごと作り直すと、直したかどうかを比べられなくなります
- 形容詞を足す。「高品質」を「圧倒的な高品質」にしても点数は動きません。動くのは名詞と数字です
- 社内で回す回数を増やす。直した一文を全員に確認してもらうと、角が取れて元の一文に戻ります
- 直す前の点数を記録しないまま着手する。上がったかどうかを見るために、着手前の状態を残してください
そもそも言葉が決まっていないと分かった場合は、書き直しでは戻せません。誰に何を約束するかから決め直す工程になります。手順は中小企業のブランディングとブランドコンセプトの作り方に、BtoBの場合はBtoBブランディングにまとめています。
アームの「選ばれる理由」の考え方
書き直しの前に、決め直しかどうかを判定します
文章の問題なのか、そもそも決まっていないのか。ここを切り分けないまま書き直すと、同じところに戻ります。判定してから、必要なときだけ決め直します。
好みでは判定しません
「なんとなく硬い」「もう少し明るく」は感想であって、判定ではありません。見れば5秒で○×がつくことだけを数えます。表現の巧拙は、この物差しの外に置いています。
自社にも同じ物差しを当てます
上の採点のとおり、アームも満点ではありません。落ちた項目とその理由まで公開しているのは、人にだけ配る基準は信用できないと考えているからです。
よくある質問
何点なら大丈夫ですか?
13点以上なら伝わっています。ただし点数より、どの軸で落ちたかのほうが実用的です。主語で落ちる場合と証拠で落ちる場合では、直す場所がまったく違います。
文章のうまさは判定しないのですか?
しません。うまさは好みの領域なので、判定に混ぜると人によって結果が変わります。この物差しは、誰が採点しても同じ結果になることを優先しています。
書いてあることは全部本当です。それでも0点になるのですか?
なります。事実かどうかと、選ぶ理由になっているかは別です。「品質が高い」は本当でも、競合も同じことを書けるなら、読み手にとっては比べる材料になりません。
制作会社に書いてもらった文章です。指摘すると角が立ちませんか?
原因を書き手ではなく決め方の側に置いてください。社内で合意を取るほど抽象的になるのは構造の問題で、誰かの力量の話ではありません。
選ばれる理由が、そもそも無い場合はどうすればいいですか?
無いのではなく、まだ言葉になっていないことがほとんどです。既存のお客様に「なぜうちに頼んだのか」を3人に聞くところから始めてください。自分たちが強みだと思っている点と、選ばれた理由が一致していないことがよくあります。
直したら、どれくらいで結果が出ますか?
言葉を直した効果は、検索順位より先に商談の内容に出ます。値段の話になるまでの時間が伸びたか、「他社と何が違うのか」を聞かれる回数が減ったか。この2つを先に見てください。
まとめ
「選ばれる理由」が効いていないとき、原因は文章の書き方ではなく、決まっていないことにあります。そして決まっていない状態は、社内で合意を取るほど見えにくくなります。誰も反対しない一文は、誰の反対も受けないまま残るからです。
効いていない一文は、値引きの回数として毎月の請求書に出ています。
まずは入れ替えテストからで構いません。自社の一文を、競合のサイトに貼ってみるところからです。手が止まったら、無料で相談してください。




