「使いにくい」と言われるが、どこを直せばいいか分からない

アーム代表の伊藤です。「使いにくい」の直し場所は感覚ではなく、機能別の利用率と離脱データで特定するのが出発点です。ユーザーテストは5〜8人で主要な使いにくさの85%を発見でき(Jakob Nielsenの調査)、改善の効果はリリース後2〜4週間で見え始めます。このページでは、UX改善が進まない3つの理由と、データ起点の4つのステップ、優先順位の判断軸を整理します。

既製服のサイズ直しと、仕立て直しの違い

たとえば既製服を体型に合わせる作業を想像してみてください。袖丈を詰める程度ならサイズ直しで済みますが、肩幅や着丈までズレている場合は、構造から仕立て直す必要があります。サービスのUX改善も同じです。表層のラベル変更やボタン色の調整で済むのか、それとも情報構造そのものから見直すべきなのか。判断を誤ると、いくら手を入れても数値は動きません。

このページで分かること

  • UX改善が機能しない原因として典型的な、3つの構造的な理由
  • UI/UX改善を進めるための、定量・定性データを起点とした4つのステップ
  • 改善の着手前に整理すべき優先順位の判断軸とチェックリスト
  • 改善のやりがちパターンと望ましいアプローチの比較整理
  • アームのUX改善への戦略ドリブンなアプローチ
  • PdM・プロダクト責任者からよく寄せられる7つの質問と回答

「使いにくい」と言われるサービスで起きている3つの典型

UX改善が進まないと感じる場面は、PdMの間でよく耳にします。その背景には、繰り返し現れる構造的な原因があります。ここでは、プロダクト現場でよく見られる典型的な3つの理由を整理します。

1. 使われない機能が並んでいるだけのUIになっている

UX改善が伸びない第一の理由は、ユーザーに使われない機能が画面に並び続けている状態です。プロダクトはローンチ後にリクエストベースで機能追加を繰り返すうちに、使われている機能と使われていない機能が混在した「機能の雑居ビル」になりがちです。

道具箱の引き出しに、使わない工具が増え続ける

これは、自宅の道具箱を想像すると分かりやすいかもしれません。引き出しに工具が10種類入っていても、毎日使うのは3種類程度です。残りの7種類は、たまに使うかもしれないという理由で残り続け、必要な工具を取り出すスピードを遅くします。プロダクトの画面にも同じことが起きています。利用率の低い機能がメイン導線に並ぶと、本当に届けたい価値への到達率が下がるのです。

利用率の低い機能をメイン導線から外すだけで、主要KPIが大きく改善するケースは少なくありません。ヒートマップやイベントログで「触られていないUI」を可視化し、削除・統合・隠蔽の判断を行うのが、UX改善の出発点になります。

2. ユーザーの行動と画面遷移がズレている

2つ目の理由は、ユーザーが実際に取りたい行動と、サービス側が想定した画面遷移が噛み合っていないケースです。

商業施設のフロアマップと、お客さんの実際の動線

たとえば商業施設のフロアマップは、運営側が「こう回遊してほしい」という意図で作られています。しかし実際のお客さんは、目的の店だけ寄って帰る人もいれば、入口で戸惑って引き返す人もいます。ヒートマップで動線を観察すると、設計と実態の差が見えてきます。プロダクトのUX改善も同じで、開発時の想定動線とユーザーの実際の操作には必ずズレがあります。

「次にやってほしい操作」が明確になっていないと、ユーザーは画面で迷い、離脱率が上がります。タスク完了率や離脱ポイントの分析で、ズレが大きい遷移を特定するのが、改善の起点です。直帰率の高い画面、滞在時間が極端に長い画面はズレの典型的なサインだと言えます。

3. 改善判断の根拠がチームで揃っていない

3つ目は、改善案の優先順位を決める判断基準が、チーム内で揃っていないケースです。

PdM・デザイナー・エンジニアの間で「何を改善すべきか」の合意が取れていないと、毎週の議論が同じ場所をぐるぐる回ります。改善案A・B・Cのどれを優先するか決まらず、結局すべて中途半端に手をつけることになる。これはUX改善で最もよく見る失敗パターンの一つです。

判断基準が揃わない原因は、定量データ(イベントログ・離脱率・継続率)と定性データ(ユーザーインタビュー・サポート問い合わせ)の片方だけで議論しているケースが多いです。両方を揃え、影響度と実装コストで優先順位をつけるフレームを共有することが、議論を前に進める第一歩になります。

UX改善を進めるための4つのステップ

原因がプロダクトの構造とチーム運用にある以上、解決もまた構造から手をつける必要があります。ここでは、UX改善を進めるための実務的な4つのステップを順に整理します。

1. ユーザーの行動データから課題を特定する

最初に取り組むべきは、定量データによる課題の特定です。憶測ベースで改善案を出す前に、実際のユーザー行動を数値で把握します。

最低限見るべき指標は、機能別の利用率、画面ごとの離脱率、タスク完了率、継続率(DAU/MAU、リテンション)の4つです。Mixpanel、Amplitude、Heap、Google Analytics などのツールでイベントログを取得し、どの機能が触られていないか、どの画面で離脱が集中しているかを可視化します。

ヒートマップツール(Microsoft Clarity、Hotjar など)を併用すると、画面内のクリック・スクロール挙動も把握できます。「ここを押してほしい」と思っていたボタンが実際には触られていない、という発見はこのフェーズで頻出します。

医者の診察と、検査の関係

これは医者の診察に似ています。「お腹が痛い」と訴える患者さんに対して、問診だけで診断する医者は信頼されません。血液検査やエコーといった客観データを揃えて初めて、的確な処方が可能になります。UX改善も、ユーザーの「使いにくい」という訴えだけで動くと、見当違いの改善になりがちです。データという検査結果を揃えてから、改善箇所を特定する順序が大切なのです。

2. ユーザーテスト・インタビューで仮説を検証する

定量データで課題箇所が見えたら、次は定性データでその原因を深掘りします。

なぜ離脱しているのか、なぜ機能が使われないのかは、数値だけでは分かりません。実際のユーザーに使ってもらい、思考プロセスを観察するユーザーテスト(ユーザビリティテスト)が、この段階で最も効果を発揮します。5〜8人にテストするだけで、主要な使いにくさの85%は発見できると言われています。

インタビューでは「使いやすかったですか?」のような誘導質問を避け、「実際どう使ったか」「何に困ったか」を行動ベースで聞き出します。録画を取り、チーム全員で見ることで、改善の優先順位が一気に揃います。

このフェーズを丁寧に行うと、定量データだけでは見えなかった「ユーザーが本当に困っているポイント」が浮かび上がります。逆にこの工程を飛ばすと、思い込みベースの改善になり、リリース後に数値が動かないという結果になりがちです。

3. 優先順位を決めて段階的に改善する

定量・定性データが揃ったら、改善案の優先順位を決めて段階的にリリースします。

優先順位の判断には、インパクト × エフォート マトリクスが実務で最もよく使われます。各改善案を「ユーザー価値・事業インパクト」と「実装コスト・工数」の2軸でマッピングし、左上(高インパクト・低エフォート)から着手するのが基本です。

限られた予算で、住宅のどこから改修するか

これは、限られた予算で住宅をリフォームする状況に似ています。屋根・水回り・内装すべてを一度に直せない場合、まず「住み心地に直結する優先度の高い部分」から手をつけます。雨漏りの屋根を放置して内装だけ綺麗にしても、住みやすさは改善しません。プロダクトのUX改善も同じで、最も影響度の高い箇所から段階的に進めるのが、限られた工数で結果を出す方法なのです。

リリース単位は、1〜2週間で検証できる粒度に分割します。大きな改善を一度にリリースすると、効果検証が困難になり、何が効いたのか分からなくなります。A/Bテストが可能な環境であれば、改善前後の数値比較を必ず取りましょう。

4. 改善後の効果を計測して次に活かす

最後のステップは、改善後の効果を計測し、次のサイクルに知見として活かすことです。

リリース後は、改善した指標が想定通り動いたかを2週間〜1ヶ月単位で計測します。動かなかった場合、その原因を分析し、次の打ち手に反映させます。「この仮説は外れた」という事実も、チームの判断軸を強化する重要な学びになります。

改善が効いた施策は、なぜ効いたのかを言語化してドキュメント化しておきます。次に類似の課題が出たとき、過去の知見を参照できる体制があると、判断スピードが大きく上がります。これがプロダクトチームの「UX改善の筋肉」になっていきます。

社内にUXデザイナーがいない場合、伴走型のパートナーを巻き込むのが現実的な選択です。データ分析・ユーザーテスト設計・改善提案までを一括で任せられる体制を作ることで、PdMはプロダクト戦略に集中しながらUX改善のサイクルを回せます。

UX改善のやりがちパターンと望ましいアプローチ

ここまでの内容を、よくある失敗パターンと望ましいアプローチに整理しました。自社のチームの現状がどちらに近いかを確認する目安として、お使いください。

観点

やりがちなパターン

望ましいアプローチ

課題発見

営業・CSからの声で個別対応

定量データで全体傾向を把握

仮説検証

チーム内議論だけで判断

ユーザーテストで実証

優先順位

声の大きいステークホルダー優先

インパクト × エフォートで判断

リリース粒度

大きな改善を一度にリリース

1〜2週間で検証可能な単位に分割

効果計測

リリース後は次の機能開発に着手

2週間〜1ヶ月単位で効果を計測

デザイン体制

社内デザイナー不在のまま放置

伴走パートナーで補強

ドキュメント

改善知見がチームに蓄積されない

効いた施策を言語化して資産化

「やりがちなパターン」のいずれかに当てはまる項目が3つ以上あれば、UX改善が機能していない構造的な原因は、ほぼ確定的です。一方の項目への対処だけでは効果が出にくいので、複数の観点を同時に見直すことをおすすめします。

UX改善の着手前に整理すべきチェックリスト

改善施策に着手する前に、PdMチーム内で整理しておくべき情報があります。これらが揃っていると、外部パートナーへの発注時のすれ違いも、社内の優先順位議論も、大きく変わります。

  • 主要KPIと現状の数値を1ページにまとめる
  • 機能別の利用率データを直近3ヶ月分用意する
  • 離脱率の高い画面トップ5をピックアップする
  • ユーザーセグメント別の継続率を整理する
  • サポート・営業に寄せられた「使いにくい」の声を分類する
  • 競合プロダクトのUX観察メモを2〜3社分用意する
  • 改善に使える開発工数(週あたりの実装に使える時間)を確定する

特に重要なのは、最初の3項目です。「KPI現状」「機能ごとの利用率」「離脱画面」が揃っていれば、その先のユーザーテスト設計と改善優先順位の議論は、格段にスムーズになります。逆にここが曖昧なまま発注に進むと、パートナー側もどこに焦点を当てるべきか判断できず、結果として「印象ベースの改善案」が並ぶことになりがちです。

社内だけで整理するのが難しい場合、ヒアリングを通じて一緒に整理する方法もあります。

アーム代表 伊藤 悠希

アームは、伝言ゲームなしで課題の整理からデザイン、実装までを一人が担う戦略デザインスタジオです。

  • サイトはあるのに、売上につながっていない
  • 問い合わせは来るが、質が合わず商談にならない
  • 何に投資すれば伸びるのか、判断がつかない

動くものなら数日で作れる時代です。問われるのは、何を作るかより、なぜ作るか。事業の分解から画面と実装まで同じ人間が担当するので、決めた方針が形になるまで薄まりません。ぜひアームに一度ご相談ください。

アームのUX改善へのアプローチ

アームでは、UX改善の課題に対して、デザイン作業の前に、データ分析と戦略フェーズから関わることを基本としています。表層のUI調整では構造的な問題は解けないため、定量データの読み解き・ユーザーテスト設計・優先順位設計・改善実装までを、一貫して伴走します。

個人スタジオという形態を取りつつ、過去には大手代理店を経由した大規模なプロダクト案件も担当してきました。発注規模が中堅以上の案件でも、データ分析から実装、リリース後の効果計測までを直接コミュニケーションで進められるのが特徴です。間に営業窓口や進行管理の担当者が入らないため、PdMチームと同じ温度感で議論できる速度感が、改善サイクルの精度を大きく変えます。

また、AI時代において「プロダクトUXの設計力」は、競合との差別化軸として重要性が高まっています。AIが機能を量産できる時代だからこそ、ユーザーが本当に必要としている体験を見極める判断軸を持っているかが、プロダクトの勝敗を分けます。アームは、AI時代でも変わらない「ユーザーの行動から考える」というスタンスを軸に、UX改善の構造改善を支援しています。

UX改善に関するよくある質問

UX改善の見直しを検討するPdMの方からよくいただく質問をまとめました。

1. UX改善の効果はどれくらいで出ますか?

改善のリリース後、主要KPIの変化が見え始めるまで通常2〜4週間、安定的な数値改善までは1〜3ヶ月が目安です。ただし改善の規模によります。ボタン文言の調整など小さな改善は数日で結果が見える一方、情報構造の見直しなど大きな改善は3ヶ月以上かけて効果が安定します。短期の数値変動だけで判断せず、複数のサイクルを回すことが重要です。

2. ユーザーテストは何人にすれば十分ですか?

5〜8人にテストすれば、主要な使いにくさの85%は発見できると言われています(Jakob Nielsenの調査による)。10人を超えると新しい発見の追加幅は急減します。重要なのは人数より、対象ユーザーの質です。実際のターゲットセグメントに近い属性の人を集めること、複数のセグメントをカバーすることが優先です。リソースが限られる場合、まず5人で実施し、結果を見て追加判断するのが現実的です。

3. 社内にUXデザイナーがいなくても改善できますか?

可能ですが、外部パートナーを巻き込むことを強くおすすめします。PdMがデザインまで兼務すると、本来集中すべき戦略・優先順位設計の時間が削られます。週1〜2日の伴走型の契約で外部UXデザイナーを入れる、または改善プロジェクト単位で発注するのが現実的な選択です。エンジニアがUI実装まで担当する体制でも、UXデザインの専門目線が入るかどうかで成果が大きく変わります。

4. 改善の優先順位はどう決めればいいですか?

インパクト × エフォート マトリクスが最もよく使われます。各改善案を「ユーザー価値・事業インパクト」と「実装コスト・工数」の2軸でマッピングし、左上(高インパクト・低エフォート)から着手します。インパクトの推定には、影響を受けるユーザー数、課題の深さ、KPIへの寄与度を組み合わせて見積もります。完璧な数値化は不要で、チームで合意できるレベルの相対比較で十分機能します。

5. 競合のUXを真似するのはアリですか?

部分的にアリですが、丸ごと真似は危険です。競合のUXは、その競合のターゲット・データ・優先順位に最適化されています。自社のユーザーセグメントが違えば、最適なUXも違います。競合観察は「自社が見落としている選択肢を発見する」目的に絞り、最終判断は自社のユーザーデータに基づくのが原則です。「競合がこうしているから」だけで改善を進めると、自社の固有の強みが薄まる結果になりかねません。

6. ヒートマップツールはどれを使えばいいですか?

無料で始めるなら Microsoft Clarity、有料の本格運用なら Hotjar や FullStory が定番です。Clarity は完全無料で機能制限も少ないため、まず導入してみるのに適しています。ヒートマップだけでなく、セッション録画も併用すると、ユーザーの実際の操作プロセスが見えて発見が増えます。重要なのはツール選びより、定期的に観察する習慣をチームに作ることです。

7. リリース後に数値が動かない場合はどうすればいいですか?

UX改善で頻繁に起きる現象です。原因は主に3つあります。第一に、改善した箇所がそもそもKPIに直結していなかった。第二に、ユーザーが新しい体験に慣れるまでの学習期間の最中で、データに反映されるのに時間がかかっている。第三に、計測の設計に問題があり、本来効いている部分が見えていない。リリース後すぐに「失敗」と判定せず、2〜4週間の観察期間を設けて、別の角度から分析することが重要です。仮説の外れも、次の打ち手の精度を上げる学びになります。

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アーム代表 伊藤 悠希

アームは、伝言ゲームなしで課題の整理からデザイン、実装までを一人が担う戦略デザインスタジオです。

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動くものなら数日で作れる時代です。問われるのは、何を作るかより、なぜ作るか。事業の分解から画面と実装まで同じ人間が担当するので、決めた方針が形になるまで薄まりません。ぜひアームに一度ご相談ください。

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