
アーム代表の伊藤です。
業務システムの使いにくさの大半は、機能の不足ではなく、画面の名前・印・操作が現場の業務理解とズレていることにあります。原因は4つに切り分けられ、直す順番は頻度×影響で決まります。
この記事は、最初の表で症状から原因を振り分け、ベンダーに頼らず現場でできる対処まで最短でたどれる構成にしています。
業務システムが使いにくい原因は、4つのどれかに当てはまる
- 原因は機能の不足ではない
- 症状は表の4行で見分ける
- 直す順番は頻度×影響で決める
業務システムの「使いにくい」の原因は、機能の不足ではなく次の4つです。現場の声が下の表のどの症状に当たるかを見てください。
原因 | 現場に出る症状 |
|---|---|
原因1 | ボタンが分からず止まる |
原因2 | 項目が見つからず疲れる |
原因3 | 画面を行き来・メモが必要 |
原因4 | エラーの意味が不明で不安 |
- 原因1: 名前・印・操作がズレていると、「どのボタンを押せばいいか分からない」「押すのが怖い」という声が出ます
- 原因2: 情報過多で目的の項目が埋もれていると、「目的の項目が見つからない」「画面を開くだけで疲れる」という声が出ます
- 原因3: 業務フローと画面の順序が合っていないと、「画面を行ったり来たりする」「入力の途中でメモが必要になる」という声が出ます
- 原因4: 通知・エラーが不親切だと、「エラーが出たが何を直せばいいのか分からない」「保存できたのか不安で二度押しする」という声が出ます
原因を取り違えると、直すべきはシステムでなく人にされる
この仕分けが要るのは、効率のためだけではありません。処理に時間がかかる原因がシステム側にあっても、周囲の目には「時間のかかる人」としか映らないことがあります。本人が原因を説明できなければ、評価の場でそのまま不利になります。原因1〜4のどれに当たるかを言葉にできれば、直す対象がシステムなのか自分の作業なのかを、本人が示せるようになります。
振り分けたら、直す順番を頻度×影響で決めます。それぞれの症状の見分け方と、今日から自社でできる対処を、このあと順に見ていきます。
業務システムの「使いにくい」の正体は、機能でなくズレ
- ズレは名前・情報量・順序の3種
- 機能を足すほど使いにくくなる
- 使いにくさは人件費に換算される問題
使いにくさの正体は機能の不足ではなく、画面の名前・印・操作と、使う人の業務理解とのズレです。
機能はあるのに、現場が結局Excelに戻ってしまう理由
業務システムの「使いにくい」の大半は、機能不足ではありません。使いにくさとは、画面の名前・印・操作が、使う人の業務の理解とズレている状態です。機能は足りているのに、目的の操作にたどり着けない、迷う、押すのが怖い。だから現場は、全部が一目で見渡せるExcelに帰っていきます。
現場で起きるズレは、名前・情報量・順序の3種類
- 名前・印・操作のズレ:ボタンやアイコンが、見た目から想像した動きと違う
- 情報過多:使わない項目が、使う項目を埋もれさせている
- 業務と画面の順序の不一致:仕事の手順どおりに画面が進まない
「好み」ではなく、毎月の人件費に化ける経営問題
そしてこれは好みの問題ではありません。使いにくい業務システムは、毎日の操作時間・入力ミス・社内問い合わせという形で人件費に換算される経営問題です。逆説的ですが、要望に応えて機能を足すほど使いにくくなるケースも珍しくありません。足すより先に、ズレの特定が近道です。
業務システムの「使いにくい」の声を、原因ごとに仕分ける
- 保存ボタンとリセットボタンが同じ形
- 情報過多は部署要望の積み重ねが原因
- 画面順序のズレは伝票と入力欄が不一致
業務システムの使いにくさは、原因ごとに出る症状が違います。現場から上がる「使いにくい」という声を、どの原因の症状なのかに振り分けるところから始めてください。
「どれを押せばいいか分からない」ボタンのズレ
症状は「どのボタンを押せばいいか分からない」「押すのが怖い」です。アイコンの意味が読み取れない、入力内容を消すリセットボタンが保存ボタンと同じ顔で隣に並んでいる、確認モーダルのどちらを押せばよいか迷う。
この3つは業務システムの画面で特に多いズレで、具体例と直し方は管理画面のUI改善の記事で詳しく解説しています。押すたびに小さな緊張が走る画面は、操作が遅くなるだけでなく、ミスの温床になります。
部署要望の積み重ねで、目的の項目が埋もれる
症状は「目的の項目が見つからない」「画面を開くだけで疲れる」です。部署ごとの要望に応えて項目を足し続けた画面は、誰の業務にとっても最適ではなくなります。ほとんど使われない項目が画面の一等地を占め、毎日使う項目が下に沈んでいるなら、原因はここです。
伝票の順番と、画面の入力順が食い違う
症状は「画面を行ったり来たりする」「入力の途中でメモが必要になる」です。紙の伝票や現場の作業手順と、入力欄の並びが一致していない。データベースの構造など、システム側の都合で画面が並んでいると、この症状が出ます。操作を覚えられないのではなく、業務の順序と画面の順序が別物なのです。
エラーの意味が分からず、保存を何度も押し直す
症状は「エラーが出たが何を直せばいいのか分からない」「保存できたのか不安で二度押しする」です。エラー文がコード番号だけ、成功したときの合図がない。こうした画面は、操作のたびにユーザーへ確認作業を強います。社内問い合わせが特定の画面に集中しているなら、まずここを疑ってください。
使いにくい業務システム、現場でまず直す順番は頻度×影響
- 毎日全員が使う画面から直す
- 自社対処は用語統一や項目非表示
- 優先度が高いのは保存取消の押し間違い
直す順番は頻度×影響で決めます。毎日全員が触る画面の小さなつまずきは、月に一度しか開かない画面の大きな不満より優先です。
優先度 | 対象 | 例 |
|---|---|---|
高 | 毎日の操作×ミスが損失に直結 | 保存と取消の押し間違いが起きる入力画面 |
中 | 毎日の操作×時間のロス | よく使う項目が探しにくい検索・一覧画面 |
低 | 低頻度×影響が小さい | 月次でしか開かない帳票画面の見た目 |
そのうえで、ベンダーに大きな改修を頼まなくても自社でできる対処があります。
- 用語の統一:画面のラベルやマスタ名を、現場で使っている言葉に合わせる。設定で変更できる製品は少なくありません
- 破壊操作の降格:削除やリセットなど取り返しのつかない操作を目立つ位置から外す、権限を絞る、確認の運用ルールを挿む
- 使わない項目の非表示:画面設定や権限設定で、業務に不要な項目を隠す
- 正しい手順を画面のそばに置く:分厚いマニュアルではなく、迷う操作の一点だけを書いた掲示や共有メモ。張り紙は敗北ではなく応急処置です
ここまでは今日から着手できます。完璧な改修を待つより、毎日のつまずきをひとつ減らすほうが先です。
決める人が使う人でないと、直したはずがまた変わる
対処を進めるときは、決める人を業務理解のある人に固定してください。現場を知らない決裁者の見た目の好みで直すと、直した画面がまた別の理由で使いにくくなり、同じ相談が繰り返されます。判断の基準は「その人の好み」ではなく「その画面を毎日使う人の業務理解」に置くことです。
業務システムの「使いにくい」を放置すると積み上がる費用
- コストは毎月のPLに見えない形で計上
- 二重入力やミス増加が固定費になる
- 使い方相談が部門の時間を奪う
使いにくい業務システムのコストは、見えない形で毎月のPLに載り続けます。
- Excel回帰と二重運用:システムへの投資が回収されないまま、転記と二重入力の工数が固定費になります
- ミスの増加:転記や二重管理が増えるほど入力ミスが増え、確認と修正の工数がさらに積み上がります
- 問い合わせ工数:「使い方が分からない」への社内対応が、担当部門の時間を奪い続けます
- 定着の遅れと教育コスト:新しく入った人が操作を覚えるまでの期間が延び、その間はミスも問い合わせも増えます
一人あたりは1日数分の迷いでも、人数と営業日を掛ければ、人件費として無視できない大きさになります。穴の空いたバケツに水を足し続けるようなもので、先に塞ぐべきは穴のほうです。
直すか作り直すかを、画面・業務・データ・運用の4つの層で決める基準は、こちらで整理しています。
リプレイスの前に、アームがまず聞く「困った場面」
- リプレイスは費用もデータ移行も再教育も重い
- 困った場面と操作まで具体的に聞く
- 個別対処の積み上げはルールがばらつく
アームは、業務システムやSaaSの画面のUIデザインを、設計から一気通貫で支援しています。「使いにくい」というご相談を受けたとき、最初に提案するのはリプレイスではなく、原因の切り分けです。
「全部作り直す」を最初の選択肢にしない理由
リプレイスは費用もデータ移行も再教育も重い選択です。そして原因を特定しないまま作り直すと、新しい画面で同じ使いにくさを再生産します。切り分けてみると、画面設計の部分的な改善で解ける不満が多くを占める、というのが現場での実感です。
「使いにくい」でなく、どの画面で何に困ったかを聞く
「使いにくい」という感想のままでは直せません。どの画面で、どの操作をしたときに、何に困ったのか。そこまで聞いて初めて、原因に対応づけられます。「体調が悪い」だけでは医者も処方できないのと同じです。可能なら、実際に操作している様子を隣で見せてもらうのが最短です。
個別の対処だけでは、別のズレを生んでしまう
用語の統一や破壊操作の降格のような個別の対処は有効ですが、積み上げるだけでは画面ごとにルールがばらつき、別の使いにくさを生みます。UIとUXの関係から改善の考え方を整理したい方は、こちらもあわせてお読みください。
切り分けた結果を第三者の目で確かめたい場合は、無料相談で現状の画面を見せていただければ、改善の起点になる箇所をお伝えします。
よくある質問
業務システムの使いにくさは、どこから直せばよいですか?
頻度×影響で優先順位を決め、毎日全員が触る画面の操作から直します。低頻度の画面の大きな不満より、毎日の小さなつまずきを先に減らすほうが、時間とミスの削減効果が大きいためです。
使いにくい業務システムは作り直すべきですか?
まず原因の切り分けが先です。名前や配置など画面設計が原因なら部分的な改善で解けることが多く、業務フローとデータ構造そのものが合っていない場合に初めてリプレイスを検討します。
現場の声はどうやって集めればよいですか?
「使いにくい」という感想ではなく、どの画面で・どの操作で・何に困ったかという症状の形で集めます。可能なら実際の操作を隣で見せてもらうのが、最も確実で速い方法です。
ベンダーに改修を頼めない場合、自社でできることはありますか?
あります。用語の統一、使わない項目の非表示、削除やリセットの権限の絞り込み、迷う操作の手順を画面のそばに置くなどは、設定と運用で対応できます。応急処置ですが、毎日の効果は小さくありません。
改善の効果はどう測ればよいですか?
操作にかかる時間、入力ミスの件数、社内問い合わせの件数を、改善の前後で比べます。いずれも人件費に直結する数字なので、改善投資の判断材料としてそのまま使えます。
使いにくさの原因を上司にどう説明すればいいですか?
「使いにくい」という感想ではなく、原因1〜4のどれに当たるかで伝えてください。「ボタンが分からない」ではなく「ラベルとアイコンがズレていて止まる」のように症状を具体化すると、遅さの原因が個人の能力ではなくシステム側にあることが伝わりやすくなります。
業務システムが使いにくい原因は、名前・印・操作など4つのズレに切り分けられる
業務システムの「使いにくい」は機能不足ではなく、名前・印・操作のズレ、情報過多、業務と画面の順序の不一致、不親切な通知の4つに切り分けられます。直す順番は頻度×影響で決め、用語の統一など自社でできる対処から着手してください。
作り直しの判断は、原因を切り分けてからで遅くありません。まずは現場がいちばん多く触っている画面をひとつ選び、今日の「使いにくい」の声を症状として書き留めるところから始めてみてください。



