よもやま話

AIは成果を見ていない|正体を伏せて自社を評価させたら、取れていないキーワードで褒められた

AIは成果を見ていない|正体を伏せて自社を評価させたら、取れていないキーワードで褒められた

アーム代表の伊藤です。
自分がアームの人間だと明かさずに、GeminiにアームというデザインスタジオのWebサイトを評価させてみました。褒められました。そして、その褒め方のほうが引っかかりました。この記事は、AIが下した自社への評価を、実測でひとつずつ答え合わせした記録です。

まず、褒められた

聞いたのは「アームというデザインスタジオが最近よくコラムを更新しているが、どんな傾向があると思うか」だけです。

返ってきたのは、要約するとこういうものでした。費用や工程を生々しく開示していて透明性が高い。AI検索時代への反応が早い。中小企業やBtoBの「選ばれる理由」に絞っている。ひとりで完結しているぶん現場の本音が出ている。

悪い気はしません。挙げられた記事も9本すべて実在しました。

続けて「SEO的にはどうか」と聞くと、評価はさらに具体的になりました。購買意欲の高いコンバージョン直前ワードを狙い撃ちしている。そして例として3つのキーワードが挙がりました。

  • LP制作 40万 内訳
  • ホームページ 保守費用 適正価格
  • 製造業 ブランディング 進め方

締めの一文がこれです。

実態は「24時間365日、勝手に信頼を稼いで見込み客を集めてくれる超優秀な営業マン」をWeb上に配置している状態です。

数字を見に行きました

褒められた本人として、心当たりがありませんでした。キーワードの取得状況を計測ツールで確認した結果が、これです。

Geminiが「狙い撃ちしている」と挙げたキーワード

アームの検索順位

LP制作 40万 内訳

圏外(獲得なし)

ホームページ 保守費用 適正価格

圏外(獲得なし)

製造業 ブランディング 進め方

圏外(獲得なし)

3つとも取れていません。

ついでにサイト全体の数字も出しました。キーワードツールの集計では、獲得キーワードは48語、1位から3位は0件です。

ただし、この数字はそのままでは使えませんでした。同じ期間をSearch Consoleで見ると、クリックか表示が発生しているクエリは866語あり、1位から3位に入っている語もあります。

クエリ

平均掲載順位

framer ai 日本語

1.6位

framer 日本語

2.1位

studio.assistant

2.2位

studio assistant

2.5位

差の正体は、ツールが持っているキーワードの範囲です。「studio assistant」はそのデータベースに入っていないので、集計上は存在しないことになる。ツールが返した「0件」は、世の中に0件という意味ではありませんでした。実際にシークレットウィンドウで検索すれば、公式サイトのすぐ下にうちの記事が出ます。

流入の実数はSearch Consoleで見ます。直近3ヶ月の合計クリックは427回、表示回数は2.29万回、平均CTRは1.9%、平均掲載順位は13.1位でした(2026年8月時点)。ならすと月140クリック前後です。

ついでに書いておくと、同じ「検索流入」でも見る場所で数字が変わります。キーワードツールの推定は月45、GA4のオーガニック検索は7月だけで449セッション。一番低い数字と一番高い数字で10倍開きます。GA4が大きく出るのは、ブックマークや直打ちの再訪が過去の流入経路に割り当てられるためで、これはAI検索最適化の成果は何で測るかで書いたとおりです。ここではSearch Consoleのクリック実測を採ります。

そして実際に順位が付いているのは、こういう語です。

実際に取れているキーワード

順位

スタジオアーム(社名の指名検索)

9位

tofu mofu bofu

6位

framerとは

6位

framer 料金

8位

Geminiが挙げた3語は取れていない。代わりに順位が付いているのは、道具の名前と用語です。

この表だけを見せられたら、こう読むのが自然だと思います。「発注直前のワードは取れていない。取れているのは道具の名前と、用語の意味調べだ」と。

私はその読み方に納得できませんでした

「framer 料金」を調べているのは誰か

Framerのプラン料金は、公式ページを見れば分かります。日本から開けば円で表示されます。それでもわざわざ日本語で「framer 料金」と調べる人がいるのは、なぜか。

答えは、自分の書いた記事の中にありました。月額の外側に乗る費用です。編集できる人を1人増やすと$20、CMSの更新だけの担当でも$10。しかもプラン本体は円なのに、ここだけドル建てのままです。プラン表の月額だけを見て体制を組むと、あとから人数分が乗ってきます。

つまりこの検索をしているのは、プランの値段を知りたい人ではなく、「うちの体制だと、結局いくらになるのか」を確かめたい人です。そして自社の記事は、その読者像をこう書いていました。

「月額の外側でいくら乗るのか、稟議の前に総コストを固めたい」という方

稟議です。社内で予算を通そうとしている人が調べに来ています。作る手段を選んでいる段階、つまり予算を組んでいる段階の人です。

市場もそう見ていました。

キーワード

CPC(広告のクリック単価)

framer 料金

13.08ドル

framerとは

6.39ドル

framer studio 比較

0ドル

ブランドガイドラインとは

0ドル

スタジオアーム(指名)

0ドル

純粋な調べものワードのCPCは、ゼロに張り付きます。「framer 料金」が13ドルというのは、広告主が金を払ってでも取りにいく層だと市場が値付けしているということです。ちなみに「ホームページ 見積もり」は18.53ドル、「uiデザイン 外注」は16.16ドル。同じ帯にいます。

読者像にはもう一つ、「制作会社にFramerでの制作を頼む前に、運用費の相場感がほしい」という方も入っていました。外注を検討する場合の分岐も、相談の導線も置いてあります。自分で設計しておいて、自分で忘れていました。

ここで気づいたことがあります。

「記事があるから、そのキーワードで取れている」と読むのも、「ツールの名前だから、発注層ではない」と読むのも、同じ誤りです。向きは正反対ですが、やっていることは変わりません。どちらも書いてあるラベルだけを見て、その言葉を検索している人を見ていない。

Geminiを笑うのは簡単ですが、同じ穴は自分の側にも開いています。

正確に言い直すと、取れている48語は一様ではなく、少なくとも3層あります。指名検索、道具の費用を調べている内製検討層、そして本当に用語を調べている層。Geminiの言う「発注直前ワード」は取れていない。けれど「全部が調べもの」でもない。

数が小さいことと、筋が悪いことは、別の話でした

危うくもう一度、同じことをやるところだった

自分の数字でも、まったく同じ読み違えをしかけました。

Search Consoleの平均CTRは1.9%です。数字だけ見れば低い。ところが平均掲載順位は13.1位、つまり2ページ目です。10位より下のCTRはおおむね1〜3%なので、1.9%は順位どおりの結果でしかありません。

これはクリックされない問題ではなく、2ページ目にいる問題です。取り違えると、タイトルや説明文を書き直す方向に走ります。順位の問題をタイトルの問題として扱うことになるので、直しても動きません。

さらに分解すると、「平均」という数字が何を隠していたかが見えます。

クエリ

表示回数

クリック

CTR

framer

3,318

20

0.6%

framer 日本語

109

19

17.4%

studio.assistant

81

10

12.3%

「framer」の1語だけで全表示回数の14.5%を占め、CTRは0.6%です。当然といえば当然で、「framer」と検索する人の大半はFramerの公式サイトを探しています。2ページ目にうちの記事が出ていても、クリックする理由がない。

一方、表示が109回しかない「framer 日本語」は17.4%。Framerが日本語で使えるのか知りたい人にとって、うちの記事はまさに探していたものだった、ということです。

だから平均CTRを上げにいくのは筋が悪い。分母に、そもそも取りにいっていない露出が大量に入っているからです。見るべきは、表示が小さくてもCTRが二桁のクエリのほうでした。

「CTR1.9%だから低い」というのも、ラベルを見て中身を見ていないという点では、ここまでの2つとまったく同じ読み方です。三度目でした。

なぜAIは、ああ見えたのか

Geminiは嘘をついていません。捏造もしていません。挙げた記事は実在するし、費用や工程を開示しているのも事実です。「LP制作 40万円の内訳」という記事は、確かに存在します。

Geminiが見たのは、そこまでです。

記事が存在することと、そのキーワードで実際に読まれていることは、まったく別の事実です。前者はサイトを読めば分かります。後者は計測ツールか、サイト運営者本人にしか分かりません。

AIは前者しか見ていません。だから「狙っている」と「取れている」を区別しない。意図を読んで、それが達成されている前提で語ります。

「CV率が非常に高い」も同じです。アームのCVの実数は、先月まで測れてすらいませんでした。問い合わせフォームが外部サービスだったので、何件来たかを正確に言えなかったのです。誰も持っていない数字を、AIは断定で褒めました

「シビアに評価して」と頼んだら

褒めるばかりでは参考にならないので、厳しく評価するよう頼み直しました。今度は5つの弱点が出てきました。答え合わせをします。

1. PVの天井が低い

当たりです。月140クリック前後、平均掲載順位13.1位。ただしGeminiがこれを言ったのは数字を見たからではなく、「ニッチなロングテールを狙っているから」という推論からです。結論は合っていて、経路は違います。

2. トピックの賞味期限が短い

当たりです。実際、料金系の記事4本に誤りが出て、先日まとめて直しました。ツールの価格改定に追随できないと、その日から間違ったことを書いているサイトになります。

3. ドメインパワーの限界

前提が雑です。競合10社の流入を実測したところ、発注クエリを取っている会社は軒並み前年比マイナス35〜43%でした。大手が安泰という前提そのものが、いまは崩れています。AIは「大手はドメインが強いから勝てる」という一般論を、確かめずに当てています。

4. 同業へのノウハウのタダ乗りになりやすい

これは検証できません。読んだ競合が真似しているかどうかは、外からは見えないからです。もっともらしいけれど、確かめようがない指摘でした。

5. SEOが成功しすぎるとパンクする

これが一番痛かったです。仮に問い合わせが月50件来ても、ひとりのスタジオが受けられるのは月1〜2件。流入を増やし続けること自体が、事業の上限と噛み合っていない

そのとおりです。しかも私は、これとほぼ同じ結論の記事を、別で書きかけていました。総数ではなく質で絞るべきだ、という話です。それを、自社の内情を知らないAIに先に言われた形になります。

褒めと批判は、同じ材料から出ている

5つ並べて気づいたことがあります。当たっていた指摘も、外していた指摘も、根拠は同じでした。サイトに書いてあるものを読み、そこから一般論を当てて、もっともらしい物語を組み立てている。成果の数字はどこにも見ていません。

だから褒めるときは「取れている前提」で褒め、批判するときは「小さい前提」で批判する。どちらも当たることがあるし、どちらも外れることがあります。

「framer 料金」を「ただの調べもの」と切り捨てる読み方も、同じ仕組みで生まれます。ツールの名前というラベルに、一般論を当てるだけ。褒めるほうに転ぶか、切り捨てるほうに転ぶかは、材料が同じでも変わります

発注先を選ぶときに、これは効いてくる

ここまでは自社の恥の話ですが、読んでいる方にとって実利があるのはここからです。

いま、制作会社を探すときにAIに聞く人が増えています。「◯◯という会社はどうですか」と聞けば、それらしい評価が返ってきます。

その評価は、その会社が何を書いたかで決まります。実績でも、成果でもありません。

コラムを大量に書いて、費用を開示して、実測データを載せている会社は、AIから高く評価されます。アームがまさにそうでした。そしてその評価は、月140クリックのサイトに対して下されていました。

逆に言えば、発信していない会社は、実力があってもAIには見えません。評価が低いのではなく、評価されないだけです。

だからAIの回答は、候補を見つける道具としては優秀ですが、選ぶ判断の根拠にはなりません。気になった会社が出てきたら、そのあとで自分の目で確かめる工程が要ります。実績ページを読む、数字の出どころを聞く、直接話す。順番が逆になると、いちばん筆まめな会社が選ばれます

アーム代表 伊藤 悠希

アームは、伝言ゲームなしで課題の整理からデザイン・実装、公開後のグロースまでを一人が担う戦略デザインスタジオです。

  • サイトはあるのに、売上につながっていない
  • 問い合わせは来るが、質が合わず商談にならない
  • 何に投資すれば伸びるのか、判断がつかない

動くものなら数日で作れる時代です。問われるのは、何を作るかより、なぜ作るか。事業の分解から画面と実装まで同じ人間が担当するので、決めた方針が形になるまで薄まりません。ぜひアームに一度ご相談ください。

それで、うちはどうするのか

正直なところ、この結果は堪えました。月140クリック、平均掲載順位13.1位。上位に入っている語も、FramerとStudio.Assistantという道具の名前に寄っています。

ただ、悪い話ばかりでもありません。Geminiがアームを推薦したこと自体は事実です。検索順位が付いていなくても、AIは名前を挙げて「中小企業やスタートアップにはこれ以上なく噛み合う」と言いました。検索で1ページ目に入っていない会社が、AIの回答では推薦される。この2つは、もう別のゲームになっています

そのうえで、5番目の指摘には従うつもりです。流入を増やす方向に投資を続けるのは、うちの規模と噛み合いません。増やすのではなく、来る前に噛み合わない相談が減るように設計するほうが理にかなっています。

次にこのテーマで書くときは、月140という数字がどう動いたか、そして問い合わせの中身がどう変わったかを、実数で出します。AIに褒められた数字ではなく、自分で測った数字のほうを

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アーム代表 伊藤 悠希

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  • 問い合わせは来るが、質が合わず商談にならない
  • 何に投資すれば伸びるのか、判断がつかない

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