
アーム代表の伊藤です。サイトリニューアルは見た目の刷新ではなく、誰にどんな理由で選ばれ直すかを設計し直す仕事で、進め方6ステップのうちデザインに着手するのは5番目です。先に動かしたい事業の数字(KGI)を決めれば、必要なページも測るべき指標も自動的に決まります。この記事では、現状分析から公開後の計測までの手順を、失敗しない全体設計として順番に整理します。
こんな方におすすめのコラムです
- 「そろそろリニューアルしたいが、何から手をつければいいか分からない」という方
- 「前回のサイトリニューアルは見た目が変わっただけで、問い合わせは増えなかった」という方
- 「リニューアルの目的を、KGIという数字にどう落とせばいいのか分からない」という方
- 「制作会社に声をかける前に、社内で何を決めておくべきか知りたい」という方
- 「公開した瞬間に検索順位や問い合わせが落ちるのが怖い」という方
サイトリニューアルの進め方は「作り直す前に、誰に選ばれ直すか」を決めることから
サイトリニューアルとは、見た目を新しくすることではなく、事業の課題を解くために構造から作り直すことです。ですから進め方も、デザインからではなく現状分析と目的の定義から始めます。この順番を守れるかどうかで、公開がゴールになるか、成果の出発点になるかが分かれます。
まず、言葉を整理しておきます。リニューアルは「更新」や「改修」と混同されがちですが、手をかける範囲が違います。
区分 | 主に変えるもの | 目的 |
|---|---|---|
更新 | 文章や画像の差し替え | 情報を最新に保つ |
改修 | 一部のページや機能の修正 | 特定の不具合や課題の解消 |
リニューアル | 情報設計・構造・デザインを作り直す | 事業課題の解決と、選ばれ方の再設計 |
※情報設計とは、どのページに、誰の、どの悩みへの答えを、どんな順番で置くかを決める設計のことです。見た目より前に決めるべき土台です。
まずリニューアルの目的とタイミングを見極める
リニューアルすべきかどうかは、見た目の古さではなく事業の困りごとで判断します。デザインが少し古くても成果が出ているサイトを、雰囲気だけの理由で作り替えるのは、動いている機械をわざわざ分解するようなものです。次のようなサインが複数重なったら、進め方の検討を始める頃合いです。
- スマートフォンで見づらい、表示が遅いと感じる
- 問い合わせや商談が、以前より目に見えて減ってきた
- 情報が増えすぎて、どこに何があるか自分たちでも分からない
- 事業やターゲットが変わり、今のサイトが実態と合っていない
- 自分たちで更新できず、運用が止まっている
背景として、見込み客が発注先を調べる場所は、すでにWebへ移っています。BtoB企業の担当者を対象にした調査では、製品やサービスを検討する段階で「提供企業のWebサイト」を主な情報源に挙げた人が35.4%、「各種Webメディア」が49.3%にのぼりました(出典: B2Bマーケティング株式会社・ITコミュニケーションズ「BtoB商材の購買行動に関する実態調査レポート2025」(2025年、n=517))。サイトは、もう会社案内の代わりではなく、選ばれるか見送られるかが決まる商談前の接点です。中小企業庁の調査でも、2024年の調査では2023年と比べて、「紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態」と回答した事業者の割合が大きく減少しています(出典: 中小企業庁「2025年版 中小企業白書」(2025年)。ただし両年はサンプル調査で母集団が異なるため、回答割合を一概には比較できない点に留意が必要とされています)。Webで判断される前提はこの先も強まります。
目的は「見た目をよくする」で止めず、KGIまで落とす
タイミングを見極めたら、次に目的を言葉にします。ここでよくつまずくのが、目的が「今より新しく、かっこよくしたい」で止まってしまうことです。それは手段であって、目的ではありません。問い合わせから商談、受注のどの数字を、どれだけ動かしたいのかを先に決める。これがリニューアルのKGI(最終的な目標指標)になります。
たとえば「月の問い合わせを今の1.5倍にし、そのうち商談化する割合を上げる」と決めれば、必要なページも、載せるべき情報も、測るべき数字も自動的に決まっていきます。リニューアルは会社のPL(損益)に効かせる投資です。いくらで作るかの前に、そのサイトでいくらを回収する設計にするのかを握ってから進めます。誰に選ばれ直すのかという問いはブランドの領域でもあり、必要に応じてブランド戦略設計の視点も合わせて整理します。
サイトリニューアルの進め方【6つのステップ】
ここからが本題です。進め方の手順は、大きく6つに分けられます。注目してほしいのは順番で、見た目のデザインに手をつけるのは、6ステップのうち5番目だということです。デザインから入らないことが、失敗しない進め方の芯になります。
ステップ | やること | 主な成果物 |
|---|---|---|
1. 現状分析 | 今のサイトの課題を数字と事実で切り分ける | 課題リスト、アクセス分析 |
2. 目的・KGI定義 | 動かしたい事業の数字を決める | 目的とKGI・KPI |
3. 要件定義・RFP | やること、予算、体制の認識をそろえる | 要件定義書、RFP |
4. 情報設計 | 誰の悩みに、どの順番で答えるかを決める | サイトマップ、ワイヤーフレーム |
5. デザイン・制作・移行 | 設計に沿って作り、旧サイトから移す | デザイン、実装、リダイレクト |
6. 公開後の計測・改善 | 数字を見て育てる | 効果測定、改善の記録 |
ステップ1:現状分析で課題を切り分ける
最初にやるのは、作ることではなく、今のサイトの何が問題なのかを事実で洗い出すことです。アクセス解析で離脱の多いページを見つけ、問い合わせに至る導線のどこで人が消えているかを確かめます。現状分析を飛ばしたリニューアルは、症状を診ずに薬を出すようなもので、作り替えても同じ不調を繰り返します。ここは競合の観察もあわせて行い、自社が何で選ばれ、何で見送られているかを言葉にします。
ステップ2:目的とKGI・KPIを定義する
現状の課題が見えたら、それを裏返して目的にします。KGIは事業のゴール(問い合わせ数や受注額)、KPIはその途中を測る指標(訪問数、資料請求率など)です。数字で決めておくと、社内の関係者が増えても判断がぶれません。「なんとなく良くなった気がする」で終わらせない歯止めになります。
ステップ3:要件定義とRFPで認識をそろえる
目的が固まったら、実現するために必要なことを要件定義としてまとめます。ページ構成、機能、CMS(自分たちで更新するための仕組み)、予算、公開時期、社内の体制。外注する場合は、これをRFP(提案依頼書)の形にして制作会社に渡すと、各社の提案を同じ土俵で比べられます。ここが曖昧だと、後から追加費用と手戻りが増えます。
ステップ4:情報設計で「誰の悩みに答えるか」を決める
情報設計とは、誰の悩みに、どの順番で答えるかを決める設計図です。どんなにきれいなデザインも、情報設計がずれていれば、探している答えにたどり着けません。ここでサイトマップ(ページの地図)とワイヤーフレーム(各ページの骨組み)を作ります。デザインの美しさは、この骨組みの上で初めて成果につながります。順番を逆にしないことが肝心です。
ステップ5:デザイン・制作・移行を進める
骨組みが決まって、ようやくデザインと実装です。ここでの判断軸も「かっこいいか」ではなく「狙った相手に、狙った行動を取ってもらえるか」に置きます。そして見落とされがちなのが移行です。URLが変わるページには旧アドレスから新アドレスへの転送(301リダイレクト)を設定し、重要な内部リンクや本文を安易に削らないようにします。この一手間を怠ると、積み上げてきた検索評価を公開日にまとめて失うことがあります。
ステップ6:公開後に計測して育てる
公開はゴールではなく、成果を出すための出発点です。公開後は、KGI・KPIが計画どおり動いているかを確認し、伸びない箇所を直していきます。表示速度のような基礎体力も成果を左右するので、公開直後に一度点検しておくと安心です(詳しくはサイトの表示速度を改善する方法を参考にしてください)。作って終わりにせず、育てられる形にしておくことが、リニューアルを投資として回収する条件です。
リニューアル費用の考え方(詳しくは別記事へ)
費用は気になるところですが、この記事では考え方だけ触れます。費用は作業量ではなく、解こうとする課題の難しさで決まるものです。同じ規模のサイトでも、事業課題が複雑で競合が強いほど、設計にかかる手間と価値は上がります。作業時間の多さで値付けを読むと本質を見誤ります。金額の内訳や適正予算の考え方は、コーポレートサイト制作の費用相場で詳しく整理しています。アームの場合の考え方と価格帯はアームの料金ガイドにまとめています。相場という言葉は便利ですが、業界共通の定価は存在しません。「何の課題に、いくら払うのか」で読むのが正しい向き合い方です。
公開後にSEOで順位を落とさないための最低限
リニューアルで一番もったいない失敗が、公開と同時に検索順位を落とすことです。深い移行設計は専門的になるので、ここでは外せない最低限だけ挙げます。第一に、変わったURLには301リダイレクトを漏れなく設定すること。第二に、成果が出ていたページの本文や内部リンクを削りすぎないこと。第三に、公開後にXMLサイトマップを検索エンジンへ送り、インデックスを促すこと。Google検索セントラルも、URLの変更を伴うサイト移転の手順として、技術的に可能ならサーバー側の恒久的なリダイレクト(301や308)を使うこと、内部リンクを新しいURLへ更新すること、新しいサイトマップをSearch Consoleへ送ることを挙げています。あわせて、移転中はサイトの順位が一時的に変動することを見込んでおくよう説明しています(出典: Google検索セントラル「URLの変更を伴うサイト移転」)。変動をゼロにする方法はない、というのが前提です。アームが実際の移行で見てきた範囲では、この3つを丁寧に押さえた案件は公開直後に多少揺れても戻っていくことが多く、リダイレクトに取りこぼしがあった案件ほど戻りが鈍くなりました。移行は華やかな工程ではありませんが、ここでの油断が数字に直結します。
サイトリニューアルでよくある失敗
見た目だけ変えて、中身は同じ
もっとも多い失敗です。デザインは新しくなったのに、載っている情報も導線も前のまま。見た目だけ変えて中身が同じなら、選ばれる理由は増えません。読者が知りたいことに答えていなければ、印象は変わっても行動は変わりません。
目的を決めずに進める
「そろそろ古いから」だけで走り出すと、途中の判断がすべて好みの話になります。関係者が増えるほど意見はまとまらず、結局は声の大きい人の好みで決まります。冒頭の「立派に作ったのに問い合わせが増えない」は、ほぼこのパターンです。
公開をゴールにしてしまう
公開日に力を使い果たし、その後の計測と改善が止まるケースです。サイトは公開してからが本番で、数字を見て直し続けて初めて成果に変わります。
現状分析を飛ばす
今の課題を確かめずに理想像だけで作ると、直すべきだった問題がそのまま新サイトに引き継がれます。作り直したのに同じ不調が続くなら、たいてい分析を省いています。
制作会社の選び方で見るべき観点
外注するなら、選び方でリニューアルの成否がほぼ決まります。見るべきは、テイストが好みかどうかではありません。実績から、課題解決の意図が読み取れるかを軸にします。次の観点で複数社を比べてください。
- 目的や課題に踏み込んだ提案をしてくれるか(要望をそのまま作るだけになっていないか)
- 実績が、見た目の派手さでなく成果や意図で語られているか
- 費用の内訳を、解く課題の単位で説明できるか
- 公開後の運用や改善まで見据えているか
- 誰が設計し、誰が作るのか、体制と窓口が明確か
とくに最後の体制は見落とされがちです。担当者を何人も経由すると、最初に伝えた課題が現場に届く頃には別物になっていることがあります。アームは代表がそのまま設計と制作まで担う一気通貫の体制で、この伝言ゲームによるズレを起こさないことを強みにしています。
アームのサイトリニューアルの考え方
作り直す前に、原因を切り分ける
私たちは、いきなり作り替えることを勧めません。まず、成果が出ていない原因が情報設計にあるのか、導線にあるのか、そもそもの届け先がずれているのかを切り分けます。原因によっては、全面リニューアルより一部の改修で十分なこともあります。無駄な投資をさせないことも、私たちの仕事のうちです。
デザインと情報設計を一体で見直す
アームはデザインスタジオですが、装飾のためのデザインはしません。誰に何を届けるかという情報設計と、それをどう見せるかというデザインを、切り離さず一体で設計します。事業の課題をデザインへ翻訳することが、私たちの得意な部分です。
公開後に育てられる形まで設計する
作って納品して終わり、にはしません。自分たちで更新でき、数字を見て改善していける形まで含めて設計します。サイトは一度の完成品ではなく、育てて選ばれ続ける装置だと考えているからです。リニューアル後にリードが増えない状態から抜け出したい場合は、ホームページで集客できないというお悩みもあわせてご覧ください。
進め方の段階からでも構いません。サイトリニューアルの進め方を相談する。要件が固まっていなくても、現状の課題を一緒に切り分けるところからお手伝いします。
よくある質問
サイトリニューアルの進め方で、最初のステップは何ですか?
デザインを考えることではなく、現状分析です。今のサイトの何が問題かを数字と事実で洗い出し、その裏返しとして目的を決めます。ここを飛ばすと、作り直しても同じ課題が残ります。
サイトリニューアルの費用の相場はどれくらいですか?
業界共通の定価はありません。費用は作業量ではなく、解く課題の難しさと競合の強さで変わります。金額の内訳や考え方はコーポレートサイト制作の費用相場で整理しています。
リニューアルにかかる期間の目安は?
規模や目的によりますが、現状分析から公開まで数ヶ月かかるのが一般的です。要件定義や情報設計を丁寧にやるほど、後半の手戻りが減り、結果的に早く安定します。
リニューアルすると検索順位は下がりますか?
Googleは、URLの変更を伴うサイト移転では順位が一時的に変動することを見込んでおくよう説明しています。変動が起きること自体は前提としたうえで、URLが変わるページの301リダイレクト、重要な本文と内部リンクの維持、サイトマップの再送信を押さえておくと、アームが実際の移行で見てきた範囲では戻りが早くなります。逆に、ここに取りこぼしがあると戻りは鈍くなります。
リニューアルは自社でやるべきですか、制作会社に頼むべきですか?
更新中心なら自社でも進められますが、情報設計から作り直すリニューアルは外部の視点があると精度が上がります。頼む場合も、目的と課題を自社で言葉にしてから相談すると、提案の質が変わります。
リニューアルの目的が社内でまとまりません。どうすれば?
動かしたい事業の数字を一つに絞るのが近道です。問い合わせを増やすのか、採用の応募を増やすのか。KGIを一つ決めると、載せる情報もデザインの判断も自然にそろっていきます。その際、数だけでなく、商談につながる問い合わせかという質もあわせて決めておくと、判断はさらにぶれにくくなります。
まとめ
サイトリニューアルの進め方は、現状分析、目的とKGIの定義、要件定義、情報設計、デザインと移行、公開後の計測という6つの手順で進めます。大事なのは、見た目からではなく、誰に選ばれ直すかから始めることです。順番を守れば、公開はゴールではなく成果の出発点になります。まずは、今のサイトの何が課題なのかを一つ書き出すところから始めてみてください。そこがはっきりすれば、進め方の残りは自然と決まっていきます。
アームは、サイトリニューアルを見た目の刷新ではなく、事業の課題を解くための設計として考えています。サイトリニューアルの進め方から相談する。何から手をつけるかが決まっていない段階からで構いませんので、よければご相談ください。
