アーム代表の伊藤です。ホームページ制作のRFP(提案依頼書)に、Word10ページの立派な文書は要りません。300万円規模までの案件なら、A4一枚に7項目を書くだけで見積もりの精度と提案の質は目に見えて変わります。この記事では、その7項目のテンプレートと記入例、そして受注側から見た「RFPなしの依頼が高くつく理由」まで整理します。
こんな方におすすめのコラムです
- 「制作会社に声をかけたいが、要望をどう文書にまとめればいいか分からない」という方
- 「ネットで見つけたRFPテンプレートはWord10ページの大企業向け。うちの200万円規模の案件には大げさすぎる」という方
- 「口頭で伝えたら、各社の提案も見積もりもバラバラになって比較できなかった」という方
- 「RFPなしで相見積もりを取ると、足元を見られるのではと不安」という方
- 「ホームページのリニューアル担当になったが、何から文書化すればいいか分からない」という方
ホームページ制作のRFP(提案依頼書)とは
RFP(Request for Proposal)とは、発注者が制作会社へ「この目的でホームページを作りたいので、提案と見積もりをください」と条件を伝える文書を指します。日本語では「提案依頼書」と呼ばれます。ホームページ制作では、複数の会社に同じ前提を渡して提案と見積もりを比較するための土台になり、これがあるかどうかで相見積もりの精度が大きく変わります。
RFI・要件定義書との違い
RFPと混同されやすい文書との違いだけ、先に整理しておきます。
文書 | 使う段階 | 役割 | 主に書く人 |
|---|---|---|---|
RFI(情報提供依頼書) | 候補探しの初期 | 各社の実績・体制・対応範囲の情報を集める | 発注者 |
RFP(提案依頼書) | 依頼先を絞り込む段階 | 目的と条件を伝え、提案と見積もりを求める | 発注者 |
要件定義書 | 発注後 | 作るものを仕様として確定する | 制作会社(発注者と一緒に) |
小規模なホームページ制作では、RFIは省いて構いません。候補が2〜3社に絞れているなら、いきなりRFPから始めて問題ないです。要件定義書は発注後に制作会社と一緒に作るものなので、発注前に自力で書く必要はありません。RFPはその叩き台になります。
RFPなしのホームページ制作依頼が高くつく理由
RFPを書く手間を惜しむと、その分のコストは見積もり金額のほうに現れます。アームが見積もりを出す立場で経験してきた構造を、種明かしとして3つ書きます。
分からないことは、全部バッファとして積まれる
「会社案内のサイトを作り直したい。詳細は打ち合わせで」という依頼を受けたとき、受注側の頭の中はこうなっています。ページ数が読めない。原稿を誰が書くのか分からない。社内の承認フローが見えず、修正が何往復するか読めない。そして読めない部分は、不確実性のバッファとして見積もりに積まざるを得ません。
症状を言わずに「なんとなく調子が悪くて」とだけ告げて診察を受ければ、念のため検査を一式やる前提の請求になります。それと同じことが、曖昧な依頼では起きています。バッファは制作会社の強欲ではなく、防衛です。そしてRFPで前提が固まっていれば、積む必要のなかったお金です。
各社が別々の前提で見積もるので、比較不能になる
相見積もりの場で見てきた範囲では、同じ口頭説明から80万円と240万円の見積もりが並ぶことは珍しくありません。中身を見ると、A社は「10ページ・原稿は支給」の前提で、B社は「30ページ・取材と原稿作成込み」の前提でした。この金額差は実力差でも良心の差でもなく、前提の差です。
前提がバラバラの見積もりは、安いほうを選んでも高いほうを選んでも根拠がありません。そして比較できない見積もりを3社分集めるのにかかった時間は、まるごと機会損失になります。RFPが揃える最大のものは金額ではなく、比較の土俵です。
予算を伏せると、提案の幅が決まらない
「予算を先に言うと、その金額いっぱいまで請求されるのでは」という警戒はよく分かります。ただ受注側から見ると、予算が見えない案件では提案の幅を決められません。外すのが怖いので安全側の小さい構成に寄せるか、松竹梅の3案を並べて様子を見るかになります。どちらも、発注者が本当に欲しいはずの「この予算で成果を最大化する一案」からは遠ざかります。
予算は1円単位で書く必要はなく、「150〜200万円」のような幅で十分機能します。幅の中でどこに配分するかを考えるのが、制作会社の提案の仕事です。
小さな案件のRFPはA4一枚でいい
「RFPは大企業がシステム調達で使う正式文書で、小さなホームページ制作には大げさ」というのは誤解です。実際は、案件の規模が小さいほど1つの曖昧さが金額に占める割合は大きくなるので、小さな案件ほど前提を固める文書が効きます。大げさなのはRFPという行為ではなく、大企業向けテンプレートの分量のほうです。
世に出回るテンプレートが10ページになるのは、稟議、調達部門の要件、既存システムとの連携仕様といった大企業の事情を背負っているからです。50〜300万円規模の案件でそれを使うと、埋められない欄の前で手が止まるか、埋めるためだけの空欄埋めで本質が薄まるかのどちらかになります。書き上がらないRFPは、存在しないRFPと同じです。
RFPの価値は分量ではなく、「全社に同じ前提を渡す」という一点にあります。それはA4一枚で果たせます。体裁も問いません。Wordでもメールの本文でも、次の7項目が書いてあればRFPとして機能します。
ホームページ制作RFPの記載項目|必須7つと省いていい項目
ここからが本題のテンプレートです。ダウンロードは不要で、この表の7行を埋めれば完成します。
必須の7項目
# | 項目 | 書くこと | 書き方のポイント |
|---|---|---|---|
1 | 会社と事業の概要 | 何を、誰に売っている会社か | 3行でよい。URLがあれば現行サイトを添える |
2 | サイトの目的 | サイトで動かしたい数字・行動 | 「問い合わせを月2件→5件に」のように行動と数字で |
3 | 現状の課題 | いま困っていること | 「採用応募者に古い印象を持たれる」など場面で書く |
4 | 想定する閲覧者 | 誰に見てほしいか | 既存客・新規客・求職者など、優先順位をつけて |
5 | 依頼範囲 | 作ってほしいもの、任せたい範囲 | ページ数の想定、原稿・写真を支給するか、公開後の保守まで頼むか |
6 | 予算 | 用意できる金額の幅 | 「150〜200万円(税別)」のように幅で。伏せない |
7 | スケジュール | 公開希望時期と、その理由 | 「10月の展示会に間に合わせたい」など理由もセットで |
7項目に共通するのは、どれも「発注者にしか書けないこと」だという点です。逆に、発注者が書かなくていいことは制作会社に委ねます。
省いていい項目
大企業向けテンプレートには載っているが、小さな案件では省いてよい項目です。
- サーバー・システム構成の指定。何で作るかは、目的と予算から制作会社が提案する側の領域です
- 機能要件の網羅リスト。「お知らせ更新機能」レベルの粒度で全機能を列挙する作業は、要件定義の段階で制作会社とやるほうが速くて正確です
- デザインテイストの細かい指定。参考サイトを2〜3個挙げる程度に留め、「どこが良いと感じたか」を一言添えるほうが提案に効きます
- 提案書の書式・目次の指定。各社の提案の自由度を奪い、比較で見えるはずの実力差を消します
- 会社沿革などの詳細資料。項目1の3行と現行サイトのURLで足ります
省く理由は手抜きではなく、提案の余地を残すためです。手段まで発注者が固めたRFPには、指示通りの作業見積もりしか返ってきません。
A4一枚RFPの記入例
産業機械部品メーカーの総務担当が、コーポレートサイトのリニューアルで書いた想定の記入例です。この分量で機能します。
# | 項目 | 記入例 |
|---|---|---|
1 | 会社と事業の概要 | 産業機械の部品加工メーカー(従業員45名)。取引先は国内の装置メーカーが中心。現行サイト: https://example.co.jp |
2 | サイトの目的 | 新規取引の問い合わせを月1件→3件に増やしたい。採用応募(中途・年5名採用目標)の入口としても機能させたい |
3 | 現状の課題 | 2015年公開のサイトでスマホ表示が崩れる。加工技術の強みがどこにも書かれておらず、展示会で名刺交換した相手がサイトを見ても発注の判断材料がない |
4 | 想定する閲覧者 | ①装置メーカーの調達・設計担当(最優先)②中途採用の候補者 |
5 | 依頼範囲 | 全体で15ページ前後を想定。会社紹介・技術紹介・事例・採用・問い合わせ。原稿は下書きを支給し、リライトをお願いしたい。写真撮影は依頼したい。公開後の保守も月額で提案してほしい |
6 | 予算 | 制作150〜200万円(税別)。保守費は別枠で月額の提案がほしい |
7 | スケジュール | 来年2月の展示会前に公開したい(逆算で12月末までに完成)。提案は今月末までにいただきたい |
全項目が埋まらなくても、出してしまって構いません。書けない欄は「未定。相談したい」と正直に書けば、そこが打ち合わせの論点になります。空欄の理由が書いてあるRFPは、曖昧なまま埋まっているRFPより受注側にとって扱いやすいです。
なお予算の幅そのものをどう決めるかは、規模別の相場観から逆算するのが早いです。コーポレートサイトの制作費用の相場に規模別の目安をまとめています。
提案が良くなるRFPの書き方、悪くなる書き方
同じ7項目でも、書き方ひとつで返ってくる提案の質が変わります。受注側として提案を書いてきた立場から、対で示します。
観点 | 提案が良くなる書き方 | 提案が悪くなる書き方 |
|---|---|---|
目的 | 「問い合わせを月2件→5件に」と行動と数字で書く | 「集客を強化したい」「イメージアップ」だけで終わる |
課題 | 「展示会後にサイトを見た相手から連絡が来ない」と場面で書く | 「古い」「ダサい」の形容詞だけで終わる |
要望 | 優先順位をつける。「最優先は技術紹介、採用は次点」 | 要望を羅列し、全部が同じ重さに見える |
手段 | 目的を書き、手段は提案に委ねる | 「トップにスライダーを」「動画を入れて」と手段から指定する |
参考サイト | URLに「事例の見せ方が良い」と理由を添える | URLだけ貼って「こんな感じで」 |
選定基準 | 「金額より、課題への提案内容を重視して選ぶ」と明記する | 何で選ぶかを書かない |
とくに効くのは、目的を数字と行動で書くことと、選定基準を明記することの2つです。「何を重視して選ぶか」が書いてあると、各社は価格を削る競争ではなく、課題への答えを磨く競争をします。発注者が受け取る提案の質は、その競争の設計で決まります。
サイトリニューアルのRFPで追加する項目
新規制作ではなくリニューアルの場合は、7項目に「現行サイトの棚卸し」を1ブロック追加します。書くのは次の4点です。
- 現行サイトのURLとページ数。おおよそで構いません
- CMS・サーバー・ドメインの管理状況。何で作られていて、誰がログイン情報と契約を持っているか
- 引き継ぐもの・捨てるもの。原稿、写真、ドメイン、既存コンテンツのうち残したいもの
- アクセス解析の有無。Googleアナリティクス等が入っているか、データを見られるか
この中で見積もりに一番響くのは、管理状況です。アームが見積もりを出す立場では、「前の制作会社と連絡が取れず、サーバーの管理者が分からない」という案件は、調査と移行のリスク分を保守・移行費に見込まざるを得ません。逆に、管理状況が一枚にまとまっているだけで、その分の上乗せは消えます。リニューアル全体の段取りはサイトリニューアルの進め方で詳しく整理しています。
RFP提出後の提案の比べ方
RFPを出す先は2〜3社が目安です。それ以上に広げると、1社ごとの検討が浅くなるうえ、提案する側も「10社コンペ」では本気の提案を出しにくくなります。
提出後にまず見るべきは、提案書より先に、質問が来るかどうかです。良い会社ほど、RFPの行間を確かめる質問をしてきます。「問い合わせを増やしたいとありますが、いまの問い合わせはどこから来ていますか」のような質問は、課題を自分の頭で考えている証拠です。質問ゼロで満額の提案書だけが届いたら、テンプレートの提案を疑ってよいと思います。
提案が出揃ったら、比較の軸は金額の絶対値ではなく次の3つに置きます。
- RFPに書いた課題に、正面から答えているか。課題の言い換えを「分析」と称して提案が終わっていないか
- 見積もりの内訳が、課題と対応しているか。どの金額がどの課題の解決に割かれているのかが読めるか
- 書いていないことを提案してきたか。RFPの範囲内の作業見積もりだけか、目的に照らした追加の視点があるか
金額に数倍の開きが出たときこそ、RFPが効きます。前提が揃っているので、差額が「何をやるかの差」なのか「単価の差」なのかを切り分けられるからです。切り分けの具体的な手順は制作会社の見積もり金額差の読み解き方にまとめています。
アームのRFPの考え方
アームは、RFPを業者をふるいにかける道具ではなく、対話の始点として扱っています。だから受け取るRFPも、完成度より「発注者にしか書けないこと」が書いてあるかを見ます。事業の実情、困っている場面、動かしたい数字。この3つがあれば、残りは打ち合わせで一緒に言語化できます。
アームはディレクター不在の一気通貫体制で、課題を直接聞いたデザイナーがそのまま設計・制作まで担当します。伝言ゲームがないぶん、A4一枚のRFPと1回の打ち合わせで要件の解像度を上げられるのが強みです。「7項目のうち3つしか埋まらない」という段階の相談でも構いません。埋まらない欄を一緒に埋めるところからが、私たちの仕事だと考えています。要件の言語化から相談したい方は、こちらのフォームからご連絡ください。
ホームページ制作のRFPでよくある質問
RFPは誰が書くべきですか?
サイト担当者で構いません。経営層の承認は「目的」と「予算」の2項目だけ先に取っておくと、後の手戻りが消えます。全項目を完璧に書ける人は社内にいなくて普通です。
何社に出すのがいいですか?
2〜3社をおすすめします。比較には十分な数で、1社ごとの提案をきちんと読み込める上限でもあります。声かけの段階で「3社に依頼している」と正直に伝えて問題ありません。
RFPの作成自体を外注できますか?
RFP作成支援を専門にするコンサルティング会社はありますが、数百万円規模のホームページ制作では費用対効果が合いにくいです。この記事の7項目を自分で埋め、埋まらない部分は候補の制作会社との初回相談で言語化するほうが現実的です。
予算を書くと、その金額まで使い切られませんか?
内訳のある見積もりを求めれば防げます。「150〜200万円の幅で、金額の根拠が分かる内訳を出してほしい」と書けば、使い切り型の見積もりは出しにくくなります。予算を伏せるデメリット(安全側の小さい提案、松竹梅の様子見)のほうが大きいというのが、受注側から見た実感です。
RFPを出したら、その会社に必ず発注しないといけませんか?
いいえ、RFPは発注の約束ではありません。ただし提案には各社の工数がかかっているので、選定結果は断る場合も連絡するのが礼儀です。
テンプレートのWordファイルは必要ないのでしょうか?
体裁は問われません。この記事の7項目がメール本文に書いてあれば、RFPとして十分機能します。形式を整える時間があるなら、目的と課題の欄を1行具体的にするほうに使ってください。
まとめ|ホームページ制作のRFPはA4一枚から
ホームページ制作のRFP(提案依頼書)は、Word10ページの正式文書である必要はありません。小さな案件こそ、A4一枚の7項目(会社概要・目的・課題・閲覧者・依頼範囲・予算・スケジュール)で前提を揃えることが、見積もりのバッファを消し、提案を比較可能にします。RFPなしの曖昧さのコストは、必ず見積もり金額と選定の手戻りに跳ね返ります。
とはいえ、RFPを完璧に書くこと自体が目的ではありません。書けない欄が残るのはむしろ普通で、その空欄こそ制作会社と最初に話すべき論点です。まずはこの記事の記入例を横に置いて、7項目のうち書けるところから埋めてみてください。
アームでは、RFPを書く前の壁打ちからお受けしています。「目的をどう言葉にすればいいか分からない」という段階からで構いませんので、要件の言語化から相談したい方はお問い合わせフォームからご連絡ください。

