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よもやま話

ノーコード制作の単価推移と生存戦略について

ノーコード制作の単価推移と生存戦略について

aaam代表の伊藤です。スタートアップから大手企業まで幅広い規模の案件に携わりながら、サイト制作からプロダクトUI、ブランディングまで包括的に支援しています。

先日、Studio seedを運営している原さんとノーコード制作の価格設定について話していたら、気づけば「そもそもこの仕事、あと何年できるんだ」という存在論的な問いに発展してしまったので、ここに供養しておきます。

この記事は特定のキーワードで集客するためのものではなく、ノーコード制作に関わるデザイナーやフリーランスに向けた、筆者なりの考察と生存戦略のメモです。体系的な解説というよりは、現場にいる人間のぼやきとして読んでいただければ。

ノーコード制作の実務的なレビューを読みたい方は「Studio.Assistantの実力と限界|デザイナー2人の本音レビュー」もあわせてどうぞ。

迫りくる自動化の足音

最近、Studioに自動レイアウト機能がつきましたが面白いですよね。というのもこの機能が自動化しているのは「レイアウトを組む」という作業であり「何をどう伝えるか」という判断ではありません。つまりノーコード制作という仕事は今「作業」と「判断」に分解されつつあり、そして自動化されているのは前者です。

脅威と捉える方もいる一方でむしろ問いの明確化だと考えています。「提供価値は作業か、判断か」という問いに、市場が答えを求め始めてるんですね。

そもそも「制作代行」の価値とは何か

まず前提を整理しますが、ノーコード制作代行が提供している価値は大きく3つあります。

1. 技術的障壁の代行

「ツールの使い方がわからない」を解決する。これが最もわかりやすい価値ですが、同時に最も脆い。なぜならツールが簡単になれば価値提供が難しくなるので。

2. 時間の代行

「自分でやる時間がない」を解決する。これは技術的障壁より持続性がありますが、価格競争に巻き込まれやすい。誰がやろうと同じ成果物なら安い方が選ばれますよね。

3. 意思決定の代行

「何をどう作るべきかわからない」を解決する。これが最も代替されにくい価値です。なぜなら、正解がない領域なので。

問題は多くのノーコード制作代行が「1. 技術的障壁の代行」と「2. 時間の代行」に依存していることです。そしてプラットフォームの進化はまさにこの2つを削りにきている。

どう生き残るのか

原さんとの会話の中で、いくつか生存戦略を挙げてみました。それぞれの論理構造を整理します。

1. フロント商品として割り切る

制作自体では利益を追わず、関係構築のきっかけにする。損して得取れ方式です。

これは「制作」をマーケティングコストとして捉える発想です。広告費だと思えば回収できなくても精神的ダメージは少ない。ただ、これを成立させるには「後続で何を売るか」が明確でないといけません。制作の後により利益率の高いサービス、運用支援やコンサルティングを提供できることが前提です。フロントだけ用意してバックエンドがない状態は単なる安売りです。

また、「安くやってくれる人」というブランドが固定化するリスクもあります。一度そう認識されると単価交渉は難しいですよね。

2. グロース支援で稼ぐ

安く早く作り、CVR改善・SEO・AIO(AI最適化)など運用支援で小さく沢山稼ぐモデルで「作る」より「育てる」にシフトする考え方です。

実は原さんもこの方向を考えているようでした。「受託は結局価格競争に巻き込まれているので、StudioのAIシステムを活用し効率よく案件を進めるサービスを考えている」とのことで、この戦略の本質は「納品して終わり」から「継続的に関わる」への転換です。制作は一度きりの取引ですが、運用では長期的なパートナーとして伴走できる。クライアントにとっても、都度発注するより相談しやすい関係が続くメリットがあります。

ただ、ここで重要なのは「運用で何をするか」の定義です。単なる更新代行だとそれこそAIに代替される。Google AnalyticsのAI分析機能など運用領域も自動化が進んでいます。必要なのは「数字を見て次の打ち手を考える」という判断の部分。つまりここでも結局「意思決定の代行」が絡んできます。

3. コンサルシフト

要件定義や戦略設計に軸足を移す。「何を作るか」を決める側に回る。AIが手を動かすなら人間は頭を動かす、という発想。これが最も「正攻法」に見えますが、実は最もハードルが高く理由は2つあります。

日本の商習慣の問題

「考える」ことに対価を払う文化が薄く「無形商材にお金を払うの?」という反応は残念ながらまだ多いです。

信頼構築のパラドックス

戦略を語るには「この人の言うことなら聞いてみよう」という信頼が必要です。でもその信頼は、多くの場合「過去によいものを作った」という実績から生まれる。なので、コンサルにシフトするためには「作る」実績を積む必要があるというパラドックスがあります。

aaamでもこのシフトを意識していて、デザイン戦略の上流から関わる案件を増やしています。

4.「作る」で戦わない

個人の信頼やブランドを売る。制作スキルはあくまで手段であり、本質的には「この人に頼みたい」という関係性が商品、という考え方です。これは戦略ではなく生き方の選択に近いかもしれません。

「この人に頼みたい」という指名買いは価格競争から完全に離脱できます。比較されないので。でもこれはスキルではなく「人」を売るということなので、得手不得手がありますね。

この戦略の難点は再現性がないことで「ブランドを作れ」と言われても具体的に何をすればいいのかわからない。バズればいいのか、実績を積めばいいのか、人脈を広げればいいのか。おそらく全部必要で時間もかかる。属人性が高い分チームで再現するのは難しいという側面もあります。

結局どれを選ぶのか

状況次第で変わりますね。結局どの戦略もトレードオフで万能な解はありません。ただ、いずれの選択肢も排他的ではありません。

例えば「2. グロース支援で稼ぐ」を入口にして「3. コンサルシフト」し、その過程で「4.「作る」で戦わない」の武器になるブランドが蓄積される、という流れは十分にあり得ます。aaamとしては「作る」という土俵での価格競争ではなく「一緒に考える」という価値で選ばれることを目指していますね。

これは構造の問題

これはノーコード制作者特有の問題ではありませんし「作る」系の仕事は軒並み同じ構造を抱えています。ツールが進化し、参入障壁が下がり、供給が増え、価格競争が起き、単価が下がる。当たり前の話なんですが、当たり前すぎて、渦中にいると意外と見えなくなります。

最後に

結局「何を作るか」ではなく「誰と何のために作るか」にウエイトを移していくしかないのだろうなと。先ほどの価値の分類で言えば「1. 技術的障壁の代行」と「2. 時間の代行」はいずれ機械に置き換わる。残るのは「3. 意思決定の代行」つまり「正解がない問いに対して一緒に考える」という部分です。

制作スキルはコモディティ化しても、関係性と文脈はコモディティ化しにくい。なぜなら関係性には「この人と働きたい」という非合理な意思決定が含まれるからです。効率だけで選ぶなら人間に頼む理由はなくなる。でも人間は効率だけでは選ばない。

少なくとも今のところは、です。

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